道端に置き忘れられたビニール傘が目に留まる
五月晴れのある日の午後
塀から突き出したパイプにぶら下がる傘は
周りの風景からやけに浮いていて
その体を陽光にてらてらと光らせていた
私は想像する
傘に秘められた物語を
午前中通り雨が降っていたことを思い出し
ビニール傘の持ち主はどこかのコンビニでそれを買い
たまたま雨が上がったので塀に掛けていったのではないかと
あるいは
この場所で急病にかかりやむを得ず傘を掛けたのではないかと
もしくは……
私は想像する
傘に秘められた物語を
あらゆるものにあらゆる物語があると信じて
私は想像する
無限に湧き出てくる想像を楽しんで
終わりのない想像に身を委ねる
私は想像する